介護のSNS採用で補う情報

介護のSNS採用は、条件情報に加えて、仕事の実態やケアへの向き合い方を伝える手段です。動画で雰囲気だけを見せず、応募判断に必要な事実を補いましょう。

この記事で分かることは、介護現場に合う動画企画、利用者情報を守る確認手順、募集広告の表示事項、見学・応募までの導線設計です。

厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく推計では、介護職員は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要とされています。これは不足人数ではなく、必要と見込まれる職員数の推計です。

介護職の候補者が動画で確かめたい内容は、主に次の4つです。

賃金、休暇、勤務地、勤務時間などの条件は、募集要項で明確に示す必要があります。動画は条件を覆い隠すものではなく、条件と現場の両方を理解してもらうための補完手段です。

出典・確認日:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2026年9月13日)

対象別に見せる内容を決める

採用対象ごとに不安は異なるため、1本の動画で全員へ訴求しようとしないことが重要です。企画ごとに、誰のどの不安に答えるかを先に決めます。

表は横に動かして確認できます

採用対象優先して伝える内容避ける表現
未経験・無資格層相談先、研修、OJT専門用語だけの説明
資格保有の経験者ケア方針、連携、裁量役割を曖昧にする訴求
復職希望者研修、引き継ぎ、勤務体制経験を前提にした説明

未経験・無資格層には、入職後に誰へ相談でき、どのように学ぶのかを事実に基づいて示します。最初から一人で任せる印象にならないよう、実施している支援だけを伝えてください。

経験者には、ケア方針や職種間の連携を示すと、働き方の質を判断しやすくなります。復職希望者には、学び直しや引き継ぎの仕組みを、実際の運用範囲で案内します。

職員の発言を台本で理想化すると、入職後の認識差につながります。事実と本人の言葉を分けずに伝える設計が必要です。

介護現場向け動画10案

動画では利用者個人やケア内容そのものを見せ場にしません。職員の準備、判断、連携に焦点を当てると、働く姿を伝えながら情報を守りやすくなります。

未経験・無資格層向け

  1. 出勤から申し送りまでの準備

    • 伝える不安:勤務開始時に何を確認し、どう仕事へ入るか。
    • 撮影場所・映してよいもの:バックヤードの準備動線、私物を除いた手元。
    • 避ける映り込み:申し送り資料、名札、利用者の予定表。
  2. 介助前に大切にする声かけと安全確認

    • 伝える不安:安全をどのように意識して業務を始めるか。
    • 撮影場所・映してよいもの:空室や研修場所でのロールプレイ、確認手順。
    • 避ける映り込み:利用者本人、居室情報、実際のケア場面。
  3. 新人研修・OJTの一部

    • 伝える不安:未経験から仕事を覚える進め方。
    • 撮影場所・映してよいもの:教材、研修用の福祉用具、職員同士の練習。
    • 避ける映り込み:研修参加者の個人情報、評価表、記録画面。
  4. レクリエーション準備の工夫

    • 伝える不安:介護職に求められる役割とチームでの分担。
    • 撮影場所・映してよいもの:職員が準備する材料、打ち合わせ、役割分担。
    • 避ける映り込み:参加する利用者、座席表、完成後の実施場面。

経験者向け

  1. 職種間連携のための準備

    • 伝える不安:介護職が他職種とどう連携するか。
    • 撮影場所・映してよいもの:会議前の準備、匿名化された説明資料。
    • 避ける映り込み:ケース情報、記録、会議中の会話内容。
  2. 夜勤・早番・遅番の引き継ぎ体制

    • 伝える不安:勤務帯が変わる際の情報共有と相談体制。
    • 撮影場所・映してよいもの:引き継ぎ前の準備、記録を使わない説明。
    • 避ける映り込み:引き継ぎ記録、モニター、利用者名が分かる音声。
  3. 福祉用具・ICTを使う業務の一部

    • 伝える不安:業務の進め方と職員の負担軽減への考え方。
    • 撮影場所・映してよいもの:用具の操作、情報を表示しない端末の外観。
    • 避ける映り込み:記録内容、通知、画面上の氏名や居室番号。
  4. 管理者が語る採用したい人物像

    • 伝える不安:事業所が重視するケアの考え方と役割。
    • 撮影場所・映してよいもの:利用者が通らない執務スペース、管理者の説明。
    • 避ける映り込み:採用選考資料、職員や利用者の個人情報。

復職希望者向け

  1. 訪問介護の移動前準備と連携

    • 伝える不安:訪問前後に行う準備とチームへの連絡方法。
    • 撮影場所・映してよいもの:事業所内での持ち物確認、車外からの出発場面。
    • 避ける映り込み:訪問先住所、訪問予定、利用者宅の外観。
  2. 職員が仕事を続ける理由

  • 伝える不安:職場で相談しながら働き続けられるか。
  • 撮影場所・映してよいもの:休憩室など業務を妨げない場所での本人の言葉。
  • 避ける映り込み:周囲の会話、第三者の顔、実態と異なる演出。

利用者情報を守る撮影手順

介護現場の撮影は、撮影前から公開後までを一つの運用として管理します。顔を隠せば常に安全とはいえないため、背景、音声、記録類も確認対象に含めます。

個人を識別できる写真は個人情報に当たり、ホームページなど第三者が閲覧できる状態で公開する際は本人の同意が必要とされています。同意取得が難しい場所は、撮影対象から外す判断が必要です。

出典・確認日:個人情報保護委員会「写真などの個人情報をホームページ等で公開する場合」(2026年9月13日)

撮影前

  • 出演する職員と撮影担当を決める
  • 利用者、家族、来訪者が通る導線を避ける
  • 同意の範囲と撮影場所を管理者が確認する
  • 業務を妨げない時間帯を設定する

編集時

  • 氏名、名札、介護記録、モニターを確認する
  • 会話、呼びかけ、通知音に個人情報がないか聞き直す
  • 職員同士の会話を同意なく切り取らない
  • 字幕で実態以上の表現を加えない

公開直前

  • 出演者、管理者、公開担当者が内容を確認する
  • 伝えた仕事内容と実際の運用に差がないか確かめる
  • 削除・修正が必要な場合の連絡先を決める

公開後の削除依頼対応

  • 依頼の受付担当と連絡方法を定める
  • 対象投稿を確認し、必要な非公開・削除手順を決める
  • 対応内容を関係者へ共有する

撮影時に問題がなくても、編集後に字幕や音声から対象者が推測される場合があります。公開前は、撮影担当とは別の担当者が視聴する確認フローを設けてください。

出典・確認日:個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(2026年9月13日)

募集広告の表示を確認する

SNS投稿で直接求人を案内する場合、投稿自体が募集広告に当たる可能性があります。該当する場合は、募集要項へのリンクだけで済ませず、投稿内の表示を確認します。

募集広告では、募集主の氏名または名称、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金の6情報を表示する必要があります。求人であることを示しながら、これらをリンク先だけに置く対応では足りません。

また、虚偽の表示や誤解を招く表示は避けます。短尺動画で全情報を読みやすく示せない場合も、投稿形式を含めて必要な表示を満たす方法を検討してください。

出典・確認日:厚生労働省「労働者の募集広告の表示について」(2026年9月13日)

労働条件の明示事項を分ける

募集広告の表示事項と、募集時に明示する労働条件は分けて整理します。投稿の内容や掲載方法によって対応が異なるため、採用担当と労務担当が確認する体制を作りましょう。

2024年4月1日から、募集時などに明示すべき事項として、業務変更の範囲、就業場所変更の範囲、有期契約の更新基準が追加されました。募集要項を更新する際は、既存の条件と併せて確認します。

動画、遷移先、受付の役割を分けると、候補者が次の行動を選びやすくなります。

表は横に動かして確認できます

接点担う役割事前に決めること
動画投稿仕事への理解を促す対象者と訴求テーマ
プロフィール等募集要項へ案内するリンク先の更新担当
募集要項労働条件を示す内容確認の責任者
見学・応募受付個別の疑問に対応する担当者と受付方法

DMだけに依存せず、問い合わせの返信担当、返信期限、DMで個人情報を受け取る場合の扱いを事前に決めます。投稿形態ごとの最終判断は、労務担当者、ハローワークなどの公式窓口、または専門家へ確認してください。

出典・確認日:[厚生労働省「令和6年4月より、

募集時等に明示すべき事項が追加されます」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1_00006.html)(2026年9月13日)

運用前に責任者を決める

運用開始前は、投稿本数より先に、公開できる事実と対応責任を決めることが重要です。確認先が曖昧なまま撮影を始めると、公開停止や返信漏れが起こりやすくなります。

次の順で担当と優先順位を整理してください。

  1. 採用したい職種、雇用形態、勤務地を定める。
  2. 発信してよい事実と公開してはいけない情報を確認する。
  3. 出演可能な職員と、利用者が映らない撮影導線を決める。
  4. 同意確認と公開承認の担当者を決める。
  5. 求人情報を更新する責任者を決める。
  6. 見学、応募、問い合わせへの対応者を決める。

公開後は再生数だけで判断せず、採用対象者からの反応、見学・応募ページへの遷移、施設見学・応募・問い合わせを段階別に記録します。反応が止まる地点を見れば、企画、募集要項、受付対応のどこを見直すべきか判断できます。